流石に大きい矢木沢ダム

矢木沢ダムは堤体高131mのアーチダムです。東電の管理用道路を進むと堤体が見えてきますが、道路とダムの位置関係からほぼ正面からみることになるのでアーチがあまり感じられません。この橋を越えて直進すると発電所(但し一般車進入禁止)、左折して一気にダム堤体高分を登って駐車場に至ります。

管理用道路から見る矢木沢ダム(2021年7月)
管理用道路から見る矢木沢ダム(2021年7月)

矢木沢ダムのダム湖は「奥利根湖」

奥利根湖の表示と奥利根湖(2021年7月)
奥利根湖の表示と奥利根湖(2021年7月)

駐車場にNC750Sを停めて、管理事務所を抜けてダム湖側に出ると「奥利根湖」の表示があります。奥利根湖は小河内ダムの奥多摩湖と比べると少し多い貯水量を持ちます。特徴的なのは地図で見ると非常にギザギザとした形をしています。これは周囲の山地からの雪解け水がそのまま小さな谷をつくりながら流れ込むことが原因と考えられます。奥多摩に比べると奥利根は圧倒的に積雪量が多い豪雪地帯です。

水はすべての生命 ー 瑞雪

水はすべての生命(2021年7月)
水はすべての生命(2021年7月)

瑞雪とは何かの吉兆として降る雪のことです。実際、奥利根湖の水は所在する群馬県だけではなく東京都にも供給されており我々の生活になくてはならないものです。このようなダムを寿ぐ碑や掲示は四国の早明浦ダムにもあります。その言葉は「四国の○○ ○ 」。期せずして似ています、リンク先でご覧ください。

洪水吐と余水吐

矢木沢ダムの洪水吐(2021年7月)
矢木沢ダムの洪水吐(2021年7月)

矢木沢ダムの洪水吐のゲートです。矢木沢ダムの目的に洪水調整が含まれているので洪水吐と呼んでよいはずです。ところがゲートの製造者三菱重工業によるプレートには「矢木沢ダム余水吐ゲート」と記載があります。ダムの公式HPやパンフレットには洪水吐。あまり厳密に分けられていないのか?

ウィングダムとわきダム

矢木沢ダムの洪水吐とウイングダム(2021年7月)
矢木沢ダムの洪水吐ー下流側から(2021年7月)

矢木沢ダムはアーチダムとして有名ですが左岸側は地質上の問題でコンクリートの重さでダム端部を支えています。上の写真の洪水吐が見えている部分がそれにあたります。このような構造はウィングダムと呼ばれ、有名な黒部ダムは両岸にウィングダムがあるそうです。

ウィングダムの手前に土手が見えていますが、はしダムと呼ばれダムの一部になっています。奥利根湖は二つの谷をせき止めて出来ているようで大きな谷をアーチダムとウィングダムでせき止め、小さな谷をはしダムでせき止めて一つの大きな湖を形成したものです。なおはしダムの上が駐車場になっています。

設計者はひょっとして○○がお好き?

矢木沢ダム洪水吐のバンク(2021年7月)
矢木沢ダム洪水吐のバンク(2021年7月)

矢木沢ダムの洪水吐ははしダムでせき止められた方の谷に誘導されています。この流路を見るとカーブしているところでバンクが付けられています。流れの外側にこぼれにくくするための措置だと思いますが…直感的には必要か?と感じてしまいました。ひょっとすると設計者が競輪好きでバンクを付けたかったのではと思ってしまいました。

右岸から矢木沢ダムの堤体を望む

右岸から望む矢木沢ダムの堤体(2021年7月)
右岸から望む矢木沢ダムの堤体(2021年7月)

右岸から矢木沢ダムの堤体を望みます。横長ではカメラのフレームに収まりません。高さ131mで非常に高度感があります。高さだけではなくダムの3次元的なアーチの影響で足元も見渡せることも大きく影響しています。重力式コンクリートダムの斜面の堤体を見るときとはかなり違う感覚です。

矢木沢ダム天端から洞元湖を望む

矢木沢ダム天端から下流を望む(2021年7月)
矢木沢ダム天端から下流を望む(2021年7月)

矢木沢ダムの天端から下流を望むと奥に前回の須田貝ダムのダム湖である洞元湖の北端部が見えます。宮ケ瀬ダム石小屋ダムも上流側のダムから下流側のダムが見えるケースですが、これだけ大規模なダムのダム湖が上流側から見えるのは珍しいような気がします。

矢木沢ダムを左岸から望む

矢木沢ダム右岸から堤体を望む(2021年7月)
矢木沢ダム右岸から堤体を望む(2021年7月)

先ほどの左岸からの写真と同様、独特の高度感があります。ダム堤体に沿って検査・保守用の通路が設置されています。簡単な手すりが付いているようですが高所恐怖症の管理人にはおよそ歩ける気がしません。更に一部不気味にさびてますし…。写真下に見えているのは水力発電所への導水管と思われます。矢木沢ダムの目的の一つは「発電」で、240,000kWの大規模な揚水発電を行います。発電所は写真左下に見切れていますが、送電設備の碍子が見て取れます。

30名近い犠牲があったそうです

矢木沢ダム慰霊碑(2021年7月)
矢木沢ダム慰霊碑(2021年7月)

ダムといえば「危険な現場」の印象が強いですが、昭和30年代に起工された矢木沢ダムも例外ではなかったようです。一方で矢木沢ダムには「移転を余儀なくされた人々」関連の記念碑などはありません。1軒だけ移転者があり、東京電力の保養所だったとのこと。そりゃあ、記念碑は立ちません。

奥利根湖とダム管理事務所(2021年7月)
奥利根湖とダム管理事務所(2021年7月)

奥利根湖をダム左岸から望みます。アーチダムの本体ダム、重力式コンクリートダムのウィングダム(洪水吐のある辺り)、フィルダム(管理棟から奥)位置関係がよくわかる一枚です。矢木沢ダムは3形式のダムが一度に見られる興味深い場所です。

なお矢木沢ダムの水は7割弱が群馬県の農業用水、2割弱が東京都の水道水(毎秒4t!)、残りは群馬県の水道水として使用されています。群馬県の農産物の多くが東京に出荷されることを考えると、矢木沢ダムは東京都を支えているといっても過言ではありません。東京都の水の多くは日本海側の豪雪地帯で降った雪の雪解け水なのです。東京都民は矢木沢ダムには頭が上げられないのです。

記念撮影をして次の目的地へ

奥利根湖をバックにNC750S(2021年7月)
奥利根湖をバックにNC750S(2021年7月)

奥利根湖をバックに記念撮影。撮影中、大型バイクでツーリングしているグループの一人の方とお話し。先週は下久保ダムに行っていたそう。ツーリング情報を交換し、挨拶して私は出発。ところが、帰路の国道120号線で撮影中にばったり会うという奇遇。面白いものです。

東京を支える矢木沢ダムを離れて、関東を支える奈良俣ダムに向かいます。