重力式コンクリートダム

下久保ダム堤体を下流側から望む(2021年6月)
下久保ダムを三波石峡から望む(2021年6月)

一般的にダムと言われて連想されるのが上の写真のような重力式コンクリートダムです。設置する環境(地盤、ダム側面の岩盤、ダムの規模)などに幅広く対応できるため中小規模のダムから大規模ダムまで日本全国で良く見られる形式です。

上の写真の下久保ダムでは最上段に非常吐のクレストゲートが設置されています。その少し下にオリフィスゲート。ダム堤体の真ん中より少し下にコンジットゲート(利水用ゲート)があります。更に写真左側に白く見えているのが発電用導水管で地下に導水され下久保発電所で発電に使用されます。堤体そのものに加えてゲートの配置や形式も重力式コンクリートダムの見どころです。

ダムによってはクレストゲートがない場合やコンジットゲートがない(ように見える)ダムもあります。東京都の小河内ダムは別に設置された洪水吐がクレストゲートの役割を果たし、コンジットゲートは構造物でおおわれて見えないという特徴があります。(コンジットゲートがないわけではない。)

また重力式コンクリートダムの一種に中空式コンクリートダムがあります。コンクリートの使用量を減らすために一時期建設されましたがその後コンクリートの価格が下がったため建設されなくなった、現在ではかなり珍しい形式のダムです。(管理人未取材。残念)

アーチ式コンクリートダム

右岸から望む矢木沢ダムの堤体(2021年7月)
右岸から望む矢木沢ダムの堤体(2021年7月)

一般的にアーチダムと呼ばれています。特徴は何と言っても美しいアーチ状の堤体です。上の写真は矢木沢ダム。アーチ式ダムは水圧をアーチ形状で支えるためコンクリートの使用量を少なくできるメリットがある一方、アーチの両翼に強固な岩盤が必要です。このため、日本国内では建設に向く地点が少なく比較的珍しい形式です。

アーチ式ダムで有名なのは黒部ダムです。黒部ダムは観光放流が有名ですが上の矢木沢ダムは観光放流できません…。黒部ダムの観光放流は堤体高さ真ん中あたりのコンジットゲートからの放流ですが、矢木沢ダムにはそれに相当するゲートがありません。というか、直下に発電所があり放流するようには設計されていません。

黒部ダムも大規模な水力発電に利用されていますが、発電所は10キロほど下流に設置されており導水し標高差を活用して発電されています。矢木沢ダムは直下で発電する方式で設計方針の違いも見どころです。黒部ダムと矢木沢ダムには共通点もあります。アーチの両端を支える両岸の強度を確保するためにウィングダムと呼ばれる重力式コンクリートダムを採用している点です。色々なダムを比較するのも面白いものです。

ロックフィルダム

奈良俣ダムの堤体(2021年7月)
奈良俣ダムの堤体(2021年7月)

ロックフィルダムはその名の通り岩石を積み上げた堤体で水圧を支える方式のダムです。コンクリートよりも密度が低いため逆にダム堤体のボリューム感が見所です。勿論、岩石だけでは水は筒抜けになってしまうので多くの場合、ダム堤体の中心に粘土質の遮水層を設置する中央土質遮水壁型ロックフィルダムが一般的です。

遮水の方式にはいくつかあり、表面をアスファルトで覆うアスファルトフェイシング、コンクリートで覆うコンクリートフェイシングなどがあります。また中央に遮水用のコンクリートを採用するコンクリートコアフィルダムなどがあります。

ロックフィルダムは構造上ゲート類を設置するのが困難なので、洪水吐(余水吐)を別の構造として持つのが特徴です。上の写真は奈良俣ダムですが、ダム堤体右側に見える直線の滑り台状の構造物が洪水吐です。洪水吐にはゲートがあるものや完全な自然越流方式によるものなどバリエーションがあります。

その中でも有間ダムはトンネルに流れ込む自然越流方式を採用しており非常に特徴的です。

アースダム

村山貯水池の堤体(2021年10月)
村山貯水池の堤体(2021年10月)

文字通り土砂を積み上げて水をせき止めるダムです。古代からある構造と言っても良いでしょう。日本最古のダムと呼ばれる大阪府の狭山池ダムは7世紀前半に建設されたと伝えられています。(勿論当時ダムという言葉はありませんが…)

アースダムの特徴は大規模なダムはありません。地震の多い日本では構造上不安視されて大規模なダムでアースダムが採用されることがないためです。但し数は多いです。特にかんがい用に建設される小規模なダムはほとんどがアースダムです。(安房中央ダム など千葉県に多い)

比較的大規模でまた有名なのは東京都の村山貯水池です。東側に都立狭山公園が設置されており、ダム堤体自体も公園の一部として利用されています。また村山貯水池の取水塔は日本で最も美しいと言われています。一度出かけてみるのもお勧めです。

バットレスダム

丸沼堰堤を下流側から望む(2021年11月)
丸沼堰堤を下流側から望む(2021年11月)

上の写真は丸沼ダム。バットレスはbuttressと書いて、応力を支える構造のことです。ダムの場合応力はダム堤体壁面が負っていますがその壁面を支えるのが(コンクリートや岩石、アーチではなく)構造物になっている点が特徴です。

ある建築家は「コロッセオ」のようだと言い、別の建築家は「こんな構造にするなら一枠一部屋でリゾートホテルにすればよいのに」とコメントしました。専門家の発想というのは管理人のような素人には及びもつきません。

ところでこの面白いバットレスダム、現状で日本に6基しかありません。元々コンクリートの使用量を節約する目的で採用された構造ですがコンクリートが安くなると、設計・施工が難しいバットレスダムは建設されなくなりました。

上の写真はその6基の中でも規模が大きくまた現役の丸沼ダムです。その珍しい形式から国の重要文化財に指定されています。残念ながら天端は立ち入り禁止ですが、遊歩道を下りていってダム堤体直下からみるバットレスダムの構造は非常に興味深いものです。

建設後に形式が変わったダム?

水が少ない二瀬ダム(2020年11月)
水涸れという訳ではないと思いますが、チョット寂しい感じ

上の写真は二瀬ダム。その形状からアーチダムとされてきました。しかし重力式コンクリートダムの特徴も持っていることから近年では重力式アーチダムという形式として分類されています。

アーチダムほど両岸の岩盤強度は必要ないにせよ、重力式コンクリートダムに比べると適地が少なく、日本で12基しかないこれも珍しい形式です。

非常に見所が多いダム形式です。まず重力式コンクリートダムの特徴である重量感のある堤体でかつアーチ式ダムとしての美しい堤体形状は注目に値します。ゲート類の設置も特徴的で二瀬ダムの場合、洪水吐のクレストゲート下のスキージャンプ台のような導水構造が興味深いものです。