デザイン ★★★★ フロント周りがこなれてないかな
エンジン ★★★★ 公道で必要十分(高速では+10~20ps欲しい)
ブレーキ ★★★ リアがちょっと…
使い勝手 ★★★★ ラゲッジ最高!給油場所と後部ラゲッジのフックに不満
コスト ★★★★★ 一日走り回っても燃料代1000円以下 素晴らしい
価格 ★★★★★ ABS, ETC, グリップヒーターついてます
愛車NC750Sの一番細かいインプレッションをお届けします。NC750SはHONDA有数の不人気車種ですが、そのバイクとしての魅力は決して他の車種に劣るものではありません。デザイン、走りに関する点、使い勝手、パッケージング、設計上興味深い点等細かくインプレします。
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NC750Sの全体像
数字で見て特徴的なのはやや長めの全長2,215mm。これは 大きめの27 ° というキャスター角が原因。またシート高790mmとかなり低めで中肉中背(169cm)短足の管理人でも両足がほぼ完全につきます。
ルックスは大きく前傾(62°)したエンジンが特徴的です。またフレームはダイアモンドですがメインフレームが低い位置に見えているのは好き嫌いが分かれるかもしれません。エンジンからリアサス、マフラー周りのデザインは良くまとまっていて好感が持てます。一方フロント周りはちょっと安っぽいかもしれません。
全体的に「低い」というのがルックス上の特徴でもありこれが走りにも影響します。
NC750Sエンジンインプレ
NC750Sのエンジンの特徴はホンダの自動車フィットのエンジンを二つ割にしたともいわれる水冷4ストロークOHC4バルブ直列2気筒のエンジン。最大出力は54ps / 6,250という低回転仕様。勿論トルクも6.9 / 4,750とバイクのエンジンとは思えない低回転仕様。なおフィットの現行はDOHC化されているのでむしろNC750Sの方が自動車っぽいかもしれません。
最大出力は同クラスの他車と比べて圧倒的に小さく、NC750Sの人気のなさの一番の原因かと思われます。では、「遅い」かというとそうでもありません。ワインディングを常識的なスピードで走っている限りエンジン特性に不満を感じることはありません。カーブの多いワインディングではトルクの立ち上がり領域を使いたいのでトルクピークに出力ピークが近い特性が強みになります。
勿論出力不足が気になる場面もあります。新東名などで一部制限速度120km/h区間がありますが追い越しなどで加速する場合にはやや非力さを感じます。勿論実用上問題ないのですが、軽くひねれば加速して…という訳にはいかずちゃんと加速すれば応えてくれるという感じです。
音に関しては吸排気系の設計の妙か直列2気筒らしい力感を感じます。好みが分かれるところでしょうが、マフラーはやや大型感を出すためのセッティングでちょっと演出過剰な気もします。音そのものは低めで住宅街でも安心して乗れるのは良いところ。
NC750S ブレーキインプレ
NC750Sは2018年11月以降、ABSが標準装備になっています。フロントブレーキはNISSINのシングルディスクですが性能に管理人は能力不足を感じたことはありません。フルスピードから目いっぱい減速するようなサーキット走行をする場面では車重を考えれば厳しいかもしれませんが公道では全く問題ありません。
ブレーキそのものの能力に対してABSの介入タイミングが思いがけず早い点がやや気になる点ではあります。2018年にABSの装着は義務付けられてまだ2年、NC750SのABSはまだ改善の余地があるように思います。
一方、リアブレーキはNISSINのシングルディスク。フロントブレーキのディスクの内側から打ち出されたものだそうですが…もう一回り能力が欲しいです。リアは管理人の乗り方もあまりよくないのかもしれませんが、中高速での「減速」はフロントしか当てにならない印象です。勿論低速域ではそれなりに効きます。
NC750S ラゲッジスペースインプレ
NC750Sといえばタンク位置のラゲッジスペースです。一般的に収納スペースを持たないバイクの中でこのスペースの存在は大きいです。乗車中はちょっとした荷物(カメラとか飲み物ペットボトルとか)を入れておいて、目的地ではヘルメットと荷物を入れ替えてアクティビティへ。大型のヘルメットは入りませんが、管理人のArai Quantum Jはちょうど入ります。
底の部分にETCユニットが納められています。毎回ETCカードを抜き差しするのは若干面倒です。閉めた時に固定するラチェット(写真左側の金具)の締りがあまりよくないレビューもあります。確かに納車当初そんな感じもありましたが、しばらくするとカチッと閉まるようになりました。コツはラチェット部に集中して体重を乗せてやる感じです。
タンクの形状をしていますが、この部分の素材は金属ではなく樹脂です。タンク上に磁石で止めるタイプのバッグは使えません。まあ、必要ないですけど。また位置的に熱がこもりやすいです。冬場に暖かいペットボトルコーヒーを入れるには良いのですが、冷たい飲み物はすぐにぬるくなります。食べ物系のお土産とかはいれない方が良いと思います。
色々書きましたがこのスペースはやはり圧倒的に便利です。
NC750S 給油位置のインプレッション
通常のタンクの位置がラゲッジになっているので給油はタンデムシートの下に移動しています。慣れていないガソリンスタンドの店員さんだとまず驚かれます。
話のタネとしては面白いのですがあまり便利とは言えません。タンデムシートに荷物を載せているときは一度おろす必要があります。また通常のタンクと違って奥行があまりないので給油する際に全開にするとガソリンが吹きこぼれる時があり、注意が必要です。
なおこのスペースの左側にヘルメットホルダーがあります。が…管理人はほとんど使ったことがありません。フロントのラゲッジスペースに収まりますからね。タンデムの時は便利です。
NC750S ラゲッジフックのインプレッション
リア周りではラゲッジフックの不便さが気になります。なぜか明示的にフックをかける場所が左右1か所しかありません。タンデムグリップに溝があってそこにひっかけられるのですが少し溝のサイズが中途半端です。
タンデムシート+グリップの幅が広いのでお土産程度の大きさの荷物を載せるには全く問題ありません。キャンプ道具とかは大判のツーリングネットでしっかり固定したいので少し困ると思います。
NC750S 技術者から見たインプレッション
NCの元となったのは、「市街地走行やツーリングなどの常用域で扱いやすい」「快適で味わい深く燃費性能に優れたミドルクラス」「求めやすい価格で提供」といった思想に重点をおいた『New Mid Concept』。このコンセプトの基、NC700シリーズがリリースされたのが2012年。それから 2014年に排気量を745ccに拡大したNC750シリーズがリリースされて今日に至ります。
前述の3つのコンセプトに対応したのがラゲッジボックスとOHC並列2気筒のエンジン(RC70E)です。ラゲッジボックスは「便利」である以上にこのバイクの設計と走りの特徴にも大きく影響しています。ラゲッジボックスを設置するためにフレームはメインフレームが大きく下側にずらされたダイアモンドでその下にずれた分をリアで大きく跳ね上がる形になっています。この形状はかなり複雑で強度設計には(現代では当然ですが)構造解析を入念に行っているものと思われます。
更にラゲッジボックスのスペースを確保するためエンジンを大きく前傾させています。このことはキャスター角の大きさの一因にもなっていると思われます。また燃料は通常の位置にはラゲッジボックスがありますからシート下に移動しています。この結果、非常に重心の低い車体となり、デザインこそネイキッドスポーツに寄せていますが走りの特徴としてはツアラーよりの安定感の強いものになっています。このバイクはNew Mid Conceptを技術的に突き詰めていった結果であり、ホンダからの新しいバイク像の提案なのです。
また求めやすい価格という点はそれを実現しておりホンダの技術者に拍手を送りたいと思います。
NC750S 不人気の理由
NC750Sが不人気の理由は「ブランドが確立する前に教習車にした」ことだと思います。NC750 シリーズの教習車仕様NC750Lは実はNCシリーズが745ccに排気量アップするきっかけになっています。
そして実際に大型二輪の教習車として多くの普通二輪の免許取得者に運転されることになります。大型二輪の教習者は過去のバイクブームで出力が自主規制される前の世代も多く、「大型の癖に…より非力じゃない?」という印象を持った人も多いと思います。実感した人もいれば、NC750Lについて調べてみて分かったという人もどちらもいるでしょう。勿論比べる対象によれば数字上もその通りです。
NC750LとNC750Sではエンジンのセッティングも違いますし、実際乗り比べるとかなり別物です。(特にギヤ比の違いや重心位置の違いは大きい)残念ながら「非力な教習車のバリエーションの一台」としてNC750Sが認知されているのが不人気の一番の理由だと思います。
また「便利」や「扱いやすい」、「燃費が良い」などの特徴は本来大きなメリットのはずなのですが、多くのライダーの「心をくすぐる魅力」ではなかったということも大きいでしょう。
NC750Sの魅力
「安心して遠乗りに出かけられてワインディングも楽しめる性能」です。バイクの本質的な楽しみである、風を感じながら全周囲の風景を楽しみながら走るを高い次元で実現します。
NC750Sの最高出力は排気量が1クラス下のCB400よりも低い値です。排気量を出力アップが主眼ではなく、明確に低回転側のトルク向上に使うのは自動車では高級セダン(クラウンとかセンチュリー)の手法でこれまでのバイクのパッケージングにはなかったやり方です。このことは「遠乗りが非常に楽」という特徴に結び付きます。遠乗りの際は一日中乗っていることも少なくないので「疲労」は「危険」に繋がりかねません。NC750Sの楽さは「安全、安心」につながります。
一方で走りが退屈というわけではありません。流石にSSや高性能機のようなハイペースは無理がありますが(何よりも管理人の腕では無理)、ワインディングでコーナーをほどほどに倒し込みながらクリアする感覚は十分に楽しいものです。非力と言われるエンジンも低回転域の出力は決して低くはありません。低速中心のワインディングを腕の良いライダーが乗ると最強なのではないかと思います。
車体価格が安いのはパッケージングの割り切りが主因です。低回転を指向したOHCエンジンは部品点数が少なく根本的にコスト的に優位でNOx発生量が少なく、音も低く小さめなので排気系のコストも下げられます。ブレーキも実を取って前後シングルディスク(前後を一枚のディスクから打ち出しているので本当にシングル)で割りきる一方、 海外の規制も関係していますが ABSを標準装備するなど安全には配慮しています。このパッケージングを「安物」と思えば選ばなければよいし、私は「上手い」と感じています。燃費も300km走って1回給油のペースなので一般道を中心に走る場合には1日走って最後に給油で十分間に合います。10lそこそこの給油量ですからガソリン代も知れています。
あちこち遠乗りする週末を本当に楽しくしてくれるのが愛機NC750Sの魅力です。
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